仮想化とは
仮想化は、1台の物理サーバーのCPU、メモリ、ディスクをソフトウェアで分割し、複数のコンピューターの環境として利用する技術です。分割した1台分の環境を仮想マシンまたは仮想サーバーと呼び、それぞれが個別にOSと業務アプリケーションを保有します。各仮想マシンのOSと物理的な機器の間に位置し、機器への指示を仲介して仮想マシンを管理するソフトウェアをハイパーバイザーと呼びます。代表的な製品にVMwareのESXiとMicrosoftのHyper-Vがあります。
例えば会計、勤怠、ファイル共有のサーバーを5台の物理サーバーで別々に稼働させている会社が、性能の高い物理サーバー2台に集約し、その上で5台分の仮想マシンを稼働させます。機器の台数、設置場所、電気代が減少し、サーバーの追加が必要になっても、数週間かかる機器の調達なしに、目安として数分から数時間で仮想マシンを追加できます。1つの敷地に、基礎と壁をそれぞれ備えた戸建てを複数建てる形に相当します。目的の一つは、用途ごとに機器を購入する必要を解消し、機器の台数と調達の期間を削減することです。
コンテナとは、分割する範囲が異なります。仮想マシンはOSを含む1台分のコンピューターを丸ごと再現し、コンテナはサーバーのOSの中核を複数で共有して、アプリケーションとその稼働に必要なソフトウェアだけを分離します。戸建てのたとえでは、コンテナは1棟の集合住宅を各戸に分割する形です。
クラウドの仮想サーバーも仮想化を基盤とし、事業者が管理する物理サーバーを仮想化して利用者に貸与する形です。

用途ごとにサーバーを購入する運用の限界
仮想化が普及する前は、業務アプリケーションごとに物理サーバーを購入するのが一般的でした。アプリケーションの提供元が他のソフトウェアとの同居を保証しない、OSの種類が異なるといった理由で、1台を1つの用途に限定します。その結果、機器の多くは性能に余裕がある状態で稼働し、機器ごとに保守契約、設置場所、電源、5年前後での機器の更新が発生します。
仮想化はこの1台1用途の制約を緩和し、1台のコンピューターで複数のOSとアプリケーションを稼働させ、運用を効率化するための技術です。仮想マシンは機器から独立したファイルとして管理できるため、後継の機器が同じ仮想化製品に対応していれば、機器の更新時に仮想マシンを移動でき、OSと業務アプリケーションを再導入する作業が減少します。

仮想化の効果と基盤の運用の費用
台数、調達、運用手順の効果
- 物理サーバーの台数の削減で、購入費、保守費、電気代が低下し、設置場所も縮小する
- サーバーを機器の調達なしで追加できるため、検証環境を用意する期間が短縮される
- 後継の機器が同じ仮想化製品に対応していれば、仮想マシンを移動して、OSとアプリケーションの再構築を削減できる
- 仮想マシン単位で丸ごと複製や退避ができ、バックアップと切り替えの手順を統一できる
基盤の費用とリスク
停止と性能に関する費用とリスクは次のとおりです。
- 物理サーバー1台の故障で、その上の複数の仮想マシンが同時に停止する。物理サーバーの故障時も業務を継続するには、物理サーバーを2台以上にし、故障した側の仮想マシンをもう1台で起動し直す構成が必要。そのために、どちらの機器からも仮想マシンのファイルにアクセスできる保管装置を設置するか、各機器の内蔵ディスクの内容を互いに複製する仕組みを用意する
- 1台が停止しても残りの機器で全部の仮想マシンを稼働させる余力が必要になる。例えば2台構成なら、各機器の能力の半分程度を未使用のまま確保するため、その分の機器の費用が発生する
- 同じ物理サーバーの仮想マシンはCPUとメモリを共有するため、1つの仮想マシンの負荷が他の仮想マシンの性能を低下させることがある
更新、ライセンス、管理に関する費用とリスクは次のとおりです。
- ハイパーバイザーと管理ソフトの更新、脆弱性への対応が、各仮想マシンのOSの更新とは別に発生する
- 仮想化製品のライセンスの費用が発生する。VMwareは2024年2月4日から永久ライセンスの販売を終了し、サブスクリプションに移行した。現在のVMware Cloud FoundationとvSphere Foundationは物理サーバーのコアの数で課金し、CPU1個あたり最低16コア分の購入が必要なため、コアの少ない小規模な構成ほど割高になりやすい
- 仮想マシンに配分したコアではなく、物理サーバーの全コアの数で課金されるソフトウェアがある。Windows Serverは物理コアで購入する場合、サーバーの全コアのライセンスが必要で、1台あたり最低16コア分を購入するため、コアの多い機器へ集約すると費用が増加する場合がある
- 仮想マシンは申請だけで追加できる一方で、廃止の手続きを規定していないと、担当者の異動後に用途の分からない仮想マシンが存続し、OSが更新されないまま放置されやすい
- 仮想化の基盤の設定、容量の配分、障害時に原因が機器か仮想マシンかを特定できる担当者が必要になる。担当者が不在だと、障害時に復旧の開始が遅延し、基盤の更新も先送りになる

仮想化の基盤を自社で持ち続けるか
既存の仮想化の基盤を保有する会社では、機器とライセンスの更新時期が、基盤の扱いを決定する時期になります。選択肢は3つです。
3〜5年の総額で比較します。自社の基盤ではライセンス、機器、保守、運用の人件費を合計します。クラウドでは月額の利用料に、移行の作業、データの転送、移行後も継続するOSの更新の作業を加算します。別の製品への移行では、仮想マシンの変換と、バックアップや監視の製品の対応の確認が追加の作業になります。
目安として、仮想マシンが数十台を超え、停止が困難な業務を多数稼働させていて、基盤を運用できる担当者が社内に2人以上いるなら、自社で保有し続ける選択が可能です。この規模では、別の製品への移行でライセンスの値上がりを抑制する検討も費用の面で合理的です。仮想マシンが10台前後で、担当者が1人か兼任なら、更新を機にクラウドへ移行するほうが、機器の更新と基盤の保守の作業から解放されます。その中間の規模では、機器の保守期限まで2年以上あれば3〜5年の総額が安価な製品で更新し、期限が近ければクラウドへ移行するのが目安です。期限が近くてもクラウドへの移行が困難な業務が多い場合は、その業務だけを対象とする小規模な構成で更新し、残りをクラウドへ移行します。

更新の検討では、次の4点を確認します。
- 現在の仮想化製品と機器の保守期限、更新後のライセンスの費用を、コアの数など契約の単位を統一して見積もったか
- 各仮想マシンの用途、担当部門、OSの保守期限が一覧になっているか
- 物理コアの数で課金される業務アプリケーションやデータベースがないか
- 物理サーバー1台が停止したときに、どの業務が停止し、どれだけの時間で復旧できるか
新規に構築するシステムでは、クラウドの仮想サーバー、コンテナの実行サービス、マネージドサービスのいずれかで要件を充足できるかを先に確認します。充足できる場合はそれらを採用し、仮想化の基盤から自社で用意するのは、法令や契約で設備を自社に設置する必要がある業務と、クラウドの3〜5年の総額が自社の基盤の総額を明確に上回る業務に限るほうが、保守の負担を軽減できます。
よくある誤解
仮想化すれば物理サーバーの故障で停止する業務は減少する
複数の業務を同じ物理サーバーに集約すると、1台の故障で停止する業務の数はむしろ増加します。物理サーバーの故障による停止を短くするのは、複数の物理サーバーで仮想マシンを別の機器で起動し直す構成と、そのための余力で、仮想化そのものではありません。
ライセンスの更新は保守料の値上げだけで完了する
課金の単位が変更されると、同じ構成でも必要な数量が変化します。例えばコアの数で課金する製品では、CPUの数とコアの数を数え直し、最低購入数を満たすかを確認します。更新の見積もりは前回の金額との比較ではなく、現在の構成から数量を算出し直して比較します。
クラウドに移行すれば仮想マシンの中の管理は不要になる
クラウドの仮想サーバーでは、事業者が物理的な設備と仮想化の層までを管理し、OSの更新とセキュリティパッチの適用は利用者の責任です。事業者に移管できるのは機器とハイパーバイザーの管理で、仮想マシンの中のOSと業務アプリケーションの更新は利用者の作業として継続します。
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