マネージドサービスとは
マネージドサービスは、データベース、ファイルの保管、システムの間のメッセージの受け渡しといった特定の機能を、クラウド事業者が運用まで担って提供するサービスです。多くのサービスでは、利用者は機能の種類と性能を選択して管理画面で作成するだけで利用を開始でき、OSとソフトウェアの更新、バックアップの取得は事業者が実施します。代表例にAWSのAmazon RDSやGoogle CloudのCloud SQLがあり、Amazon RDSはバックアップ、ソフトウェアのパッチ適用、障害の自動検知と復旧を管理します。
Amazon RDSで障害時に予備の設備へ自動で切替を行うには、マルチAZ配置と呼ぶ、複数の設備に分散して配置する構成を選択します。この構成では予備の設備の分の料金が追加されます。
例えば販売管理システムのデータベースを、クラウドの仮想サーバーに自分で導入して利用する場合、OSとデータベースの更新、夜間のバックアップの設定、障害時に予備の設備への切替を行うフェイルオーバーの仕組みを自社で用意します。同じデータベースをマネージドサービスで利用すると、Amazon RDSなどではこれらを管理画面で設定するだけで完了し、必須の更新は利用者が指定した時間帯に自動で適用されます。
目的は、定型的な運用の作業を事業者に委託し、利用者が業務の開発に人手を充当できるようにすることです。
SaaSやサーバーレスとは、自社で開発する範囲が異なります。SaaSは会計や勤怠のような完成した業務アプリケーションを利用する形で、マネージドサービスは自社で開発する業務アプリケーションが利用するデータベースなどの機能を事業者に運用させる形です。サーバーレスはプログラムだけを登録し、実行の基盤も利用量に応じて事業者が用意する形で、マネージドサービスの一種に分類されることもあります。
運用の作業を外部の会社に代行させる契約も、マネージドサービスと呼ばれます。この意味では人の作業を委託し、請求元はクラウド事業者ではなく運用会社です。会議でこの語が登場したら、事業者のサービスの話か、運用の代行の話かを先に確認します。

自社で運用するデータベースの作業
業務システムのデータベースを自社で運用すると、機能を利用する前に多くの作業が発生します。OSとデータベースのソフトウェアの導入、月例のセキュリティ更新、バックアップの取得と保管、障害時に予備の機器への切替を行うフェイルオーバーの仕組みの構築と試験です。AWSは、仮想サーバーでデータベースを運用する形では、OSやデータベースのソフトウェアを手作業で更新するときに誤操作で業務を停止させやすいと説明しています。
専任の担当者がいない会社では、これらの作業が他の業務の合間になり、更新の遅れや、一度も復元を試験していないバックアップが存在しやすくなります。マネージドサービスは、こうした定型的な運用の作業を事業者に移管するサービスです。
| 作業 | 自社のサーバー | クラウドの仮想サーバー | マネージドサービス |
|---|---|---|---|
| 機器の保守と更新 | 自社 | 事業者 | 事業者 |
| OSの導入と更新 | 自社 | 自社 | 事業者 |
| データベースの導入と更新 | 自社 | 自社 | 事業者 |
| バックアップの取得と障害時の切り替え | 自社 | 自社 | 事業者 |
| 表の設計、問合せの改善、権限 | 自社 | 自社 | 自社 |
この表の担当の分け方は、AWSのAmazon RDSの責任の比較表と、問合せの調整を利用者の責任とする同じページの説明を要約したものです。表の設計と権限の管理はAWSの比較表に含まれませんが、利用者が担います。障害時の切り替えは、複数の設備に分散して配置する構成を選択した場合に事業者が担います。

事業者への移管の範囲と利用者の責任
事業者に移管できる作業
- OSとソフトウェアの更新、バックアップの取得の作業が減少し、専任の担当者がいなくても運用を継続しやすい
- 目安として申込みから数分から数十分で利用を開始でき、性能の増強も設定の変更で完了する
- 複数の設備に分散して配置する構成や、ポイントインタイムリカバリと呼ぶ任意の時点へ復元する機能を、設定項目として利用できる
- Amazon RDSでは、セキュリティと安定稼働に関する必須の更新を、事業者が数か月に1回程度、指定の時間帯に適用する
費用と利用者側の制約
- 同じ性能の仮想サーバーに自分で導入するより、事業者が担う運用の作業の分だけ、目安として利用料は高くなることが多い。複数の設備に分散して配置すると、予備の設備の分だけさらに増加する。Amazon RDSの料金は性能、保存容量、バックアップの保存量、データの転送量などで決定され、提供期限を経過したバージョンでは延長サポートの料金が加算される
- 標準の形ではOSにログインできず、設定できる項目は事業者が用意した範囲に限られる。OSの操作が必要な場合は、RDS Customのような別の形を選択する。特殊な拡張機能や旧バージョンのソフトウェアを利用できない場合がある
- 必須の更新では短時間の停止が発生することがある。Amazon RDSでは、必須の更新は無期限には延期できない
- ソフトウェアのバージョンの提供期限は事業者が決定する。Amazon RDSは標準の期限を経過したバージョンを使い続けると、延長サポートとして追加の料金を請求する。期限までに更新しないと自動で延長サポートに加入する場合がある
- 自動のバックアップの保持期間には上限がある。Amazon RDSでは0日から35日の間で設定する。それより長い保管や、別のアカウントへの複製は利用者が用意する
- 事業者固有の機能を多く利用するほど、移行先に同じ機能がなく代替する改修が必要になり、他のクラウドや自社の設備への移行が困難になる
- 表の設計、遅い問合せの改善、利用者の権限、データの暗号化の設定は利用者の責任である

データベースの運用を自社で担うかマネージドサービスに委託するか
業務システムの責任者は、新規に構築する業務システムのデータベースやファイルの保管について、後述の自社で運用する条件に該当しなければ、マネージドサービスを第一の選択にします。判断の材料は、利用料の差額と、自社で運用した場合に必要な作業の量です。
- 運用の専任の担当者がいない会社: 自社で運用すると更新と障害対応が後回しになりやすい。その結果、脆弱性の修正の適用が遅延し、復元を試験していないバックアップが残存する危険が増大する。利用料の差額は、このリスクを低減する費用として評価する
- 停止を数時間以内に限定したい業務: フェイルオーバーの仕組みを自社で構築し夜間の対応の担当を配置するための人件費と、複数の設備に分散して配置する構成の利用料を、どちらも停止の要件を満たす前提で比較し、安価なほうを選択する
データベース1台を数十人の社員が利用する程度の業務システムでは、自社で運用する場合に必要な作業は、更新、バックアップの確認、障害対応を合計して、目安として月に数日分になります。マネージドサービスにしても、権限の点検、遅い問合せの有無の確認、事業者からの通知への対応に、目安として月に数時間から十数時間は発生します。両者の工数の差と、利用料の差額を同じ期間で比較します。

次のいずれかに該当する場合は、マネージドサービスを利用せず自社で運用します。
- 業務パッケージの提供元が、データベースの特定のバージョンや、OSへのログインを前提にした設定を指定していて、マネージドサービスでは充足できない
- マネージドサービスで提供されない拡張機能が必要な業務や、事業者の必須の更新の日程を許容できない業務がある
- データベースの運用に精通した担当者が社内に複数いて、停止の要件を自社で充足でき、大規模で利用料の差額が人件費を上回る
利用を開始する前に、次の4点を確認します。
- 更新の時間帯を業務の時間外に指定したか。必須の更新で停止が発生しても業務に影響しないか
- バックアップの保持期間と、任意の時点に復元できる範囲が、業務で消失を許容できる範囲を満たすか。長期の保管を誰が用意するか
- 利用するソフトウェアのバージョンの提供期限と、期限前の更新の作業を誰が担うか
- 利用者の権限、接続できるネットワーク、データの暗号化を誰が設定し点検するか
よくある誤解
マネージドサービスにすれば運用の担当者は不要
Amazon RDSのようなデータベースのマネージドサービスで事業者が担うのは、主にOSとソフトウェアの更新とバックアップの取得です。事業者からの更新の通知やバージョンの期限の案内を確認し、対応を判断する担当者がいないと、期限後に追加の料金が発生したり、必須の更新による停止が業務時間と重複したりします。
マネージドサービスなら停止しない
事業者の設備も故障し、更新のための短時間の停止も発生します。Amazon RDSの稼働率の目標は、複数の設備に分散して配置した構成で月99.95%、単独の構成で月99.5%です。下回った場合の補償は、対象の月の利用料の10%から100%を以後の利用料に充当するサービスクレジットで、返金はされません。停止の影響を軽減するには、複数の設備に分散して配置する構成を選択します。
同じ分野の用語
クラウド・インフラの用語をすべて見るお問い合わせ・ご相談
システム開発、データ活用、プロダクトづくりのことならお気軽にご相談ください。要件が固まる前の整理や、お見積もりだけのご依頼も承ります。












