オンプレミスとは
オンプレミスはサーバーやネットワーク機器を自社の施設に設置し、電源、空調、保守まで自社で行う形態です。社内のサーバー室をイメージすると近いです。
外部に公開できないデータを処理する場合や、通信の遅延を避けたい場合、長期の総額を把握したい場合に選択します。
クラウドが事業者の設備を利用するのに対し、オンプレミスは設備そのものを自社で保有し、構築と運用の責任も自社にあります。
機器の選定、設置場所、更新時期、障害対応の手順もすべて自社で決定します。担当者は自社の社内に配置し、ベンダーとの契約と保守の調整も自社が行います。
利用する部門の立場では社内のネットワークで完結するため、通信の遅延を避けやすくなります。

クラウドが第一候補でも自社設備を採用する理由
全社での利用と一部の事業所または部門での利用を合算して、2024年に80.6%の企業がクラウドサービスを利用しています。
政府情報システムではクラウド利用を第一候補として検討することを求めるクラウド第一原則が定められています。
クラウドへの移行を目的化して利点を十分に得られなかった例は、課題として指摘されています。
そのうえで、安全保障や公共の安全の維持に関係する機微な情報を処理する政府情報システムはクラウド第一原則の対象外とし、別に定めた基準に従うと定めています。
データセンターの設置場所は国内が基本です。
保存先を国内の自社設備に限る要件がある処理では、クラウドの利用率が高くても自社設備が選択肢になります。

自社保有で自社が決定できる統制の範囲
委託が困難な情報と、通信の遅延が許容できない処理のために、自社で保有する形態が選択されてきました。
- 誰がどの機器を操作するかを自社の基準で決定できる
- 外部のインターネットに接続しない社内専用のネットワークを閉域網という。接続先を限定する業務に適する
- 個人データの保存先を国内の自社設備に固定でき、越境の手続きを避けられる
- 一括購入したソフトウェアと専用機器を、契約が継続する限り利用できる
通信の往復遅延は同じ建物内なら数ミリ秒以下、遠隔地やクラウド経由なら数十ミリ秒が目安です。
値は回線の距離で変化します。
画面の応答時間は通信の時間にアプリの処理時間が加算されます。
製造装置の制御や高頻度の取引のように往復の回数が多い処理では、この差が処理の設計を変更します。

自社設備の維持にかかる費用と負担の所在
維持の費用と負担は設備、電気、要員、更新の4つです。
費用の内訳
- 初期の費用
- 台数と冗長化の構成で変動するが、機器の購入と構築の費用が初期に集中し、おおよそ数百万円から数千万円かかる
- 電子計算機の費用は法定耐用年数に従って配分するので、更新のたびに設計と移行の作業も発生する
- 継続してかかる費用
- 電気代と空調の費用が毎月かかり、機器を設置するための棚は1台あたり月数万円から十数万円が目安になる。利用量に関係なく同じ額がかかる
- 一括購入のライセンスは初期費用が中心で、利用を削減しても購入済みの費用は回収できない
- 保守契約は台数単位で更新されることが多く、削減には契約の見直しが必要になる
- 人の費用
- 監視と一次対応に1〜2名が必要になり、障害対応と更新まで含めると常時2名以上の確保が目安になる
- 障害の復旧は自力で行い、故障した機器の手配と保守ベンダーの調整も含む
- 構成と手順が担当者に依存し、交代のたびに移管の費用がかかる
- 更新とその他の費用
- 更新を先送りするとサポートが終了した機器とソフトウェアが残存する
- 災害に備えた対策は自社の投資になるため、遠隔地の予備設備と回線の確保も必要になる
- 入館管理、保険、機器の廃棄とデータの消去にも費用がかかる
障害の一次対応は夜間と休日にも発生し、当番の体制と手順の引き継ぎを自社で用意します。
5年程度の総額で比較すると、常時高い負荷で稼働するシステムは自社設備のほうが低コストになる場合があります。
ピークが平均の2〜3倍を上回るなら、ピークに適合させた容量が平常時に余剰となり、クラウドのほうが低コストです。
減価償却費は取得価額と耐用年数で確定するため、資産を売却・除却しない限り、稼働率を低下させても年間の費用は変化しません。

自社設備とクラウドの判断の分かれ目
新規の社内システムはクラウドで構築し、既存資産の継続と、法令と応答の要件が強固な処理だけを自社設備に維持します。
判断の分かれ目は保存先と復旧体制の要件です。
判断の条件
- 法令や取引条件で保存先を国内や自社に限る業務は、越境する場合は本人の同意などの要件を満たす必要があるため、自社設備か専用の環境にする
- 障害対応と更新を担う要員が常時2名以上いないなら、停止時の復旧が遅延するため、自社設備は推奨しない
- 同じ用途で5年以上の利用を継続するなら、設備の費用を回収するのに数年の稼働が必要になるため、自社設備を検討する
- 基幹の処理は常時稼働で、ピークと平均の負荷の差が小規模なら、容量の遊休時間は短いため自社設備が適する
- 季節やキャンペーンで負荷が数倍になるなら、ピークに適合させた設備が平常時に余剰となるためクラウドを選択する
- 画面操作が中心の業務は国内のクラウドでも数十ミリ秒程度で、体感の差が軽微なため応答時間を選定理由にしない
- 要件を満たすクラウドサービスが存在しない場合に限り、機密性の高い情報を自社設備に維持する
行政の調達では要機密情報を処理するクラウドサービスを、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度であるISMAPのクラウドサービスリストから選択することが必要になる場合があります。
このリストはセキュリティの評価を受け基準を満たしたサービスの一覧です。
この場合は対象業務をクラウドに配置する前提で範囲を決定します。
自社の機器をデータセンターに設置するハウジングや、運用だけを委託する形態もあり、保有と利用の間には段階があります。
試作、利用者が数十人の社内ツール、個人情報を含まない情報共有では、保存先と社内専用のネットワークの検討は不要です。
費用と運用が安定しているクラウドのシステムは、自社設備へ復帰する理由がありません。
自社設備の更新時期と運用の要員
機器の保守期限と減価償却の残り年数から更新の年を決定し、その年に設計と移行を担う人を確保します。
一括購入のライセンスと保守契約は、更新の前に延長の条件と費用を確認します。

よくある誤解
自社設備のほうが安全
外部から分離しても、内部不正、設定の不備、更新の遅れは残存します。
クラウドに処理を集約すること自体が安全対策になります。
自社設備が安全かどうかは設置場所ではなく、権限、暗号化、更新、監視の設計で確定します。
自社設備のほうが安価
機器の代金だけでは自社設備のほうが低コストだと評価しやすいです。
自社設備の総額には電気、空調、棚、要員、更新の費用も含まれます。
ピークが平均の2〜3倍を上回るシステムでは、5年程度でクラウドのほうが低コストになります。
クラウドはデータが海外に保存される
国内のリージョンを選択すればデータを国内に設置できます。
海外にデータを設置する場合は適用される法令と契約の確認が必要です。
専用環境の利用はオンプレミスと同じか
専用のクラウド環境はプライベートクラウドと呼ばれ、自社の敷地内にある場合と外にある場合があります。
自社の敷地内で保有・運用するプライベートクラウドは、オンプレミスと費用や運用責任が共通する部分もあります。
両者の違いは利用のたびに資源を配分するか、固定の設備を専有するかにあります。
自社設備なら自由に変更できる
自社設備でも自由に変更できる範囲は限定的です。
変更の範囲は機器の性能、ソフトウェアのライセンス、保守契約、担当者のスキルで確定します。
一括購入の製品はサポート終了時期を起点に移行を計画します。
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