クラウドとは
クラウドは事業者の設備をネットワーク経由で必要な分だけ利用する仕組みです。
メール、写真の保存、Webサービスの実行など、自社に機器がなくても利用できます。
一般にはパブリッククラウドを指します。
機器を保有しないため、購入する場合と調達する場合では費用と変更できる範囲が異なります。
クラウドの技術で自社専用の環境を運用するプライベートクラウドは、設備を自社で保有する場合もあり、オンプレミスとの分かれ目は費用と運用の責任です。
利用する範囲はアプリから基盤まで幅があります。
クラウドは資源の確保の仕方や料金の決め方を含む5つの特性で定義されます。
そのうち、必要なときに人手をかけず資源を確保できる点と、利用量を計測して料金に反映する点が特徴です。
設備と物理的な基盤の管理は事業者の担当です。
データ、構成と設定、アカウントは、どの利用形態でも利用者の責任です。
設備の利用は区画単位の貸し倉庫に近い形です。
建物と警備は事業者が用意します。
棚と鍵、荷物は自分で管理します。

サーバー準備の待ち時間を短縮して事業を開始できる
サーバーを自前で準備する場合、要件の整理、発注、納品、設置に数週間から数か月がかかります。
初期投資も先に発生し、需要の予測が不正確だと過剰な設備は無駄になり、不足する設備は機会損失になります。
クラウドではこの待ち時間と初期投資を、利用量に応じた支払いへ置換できます。
大半のサービスは従量制で、長期契約を前提にしていないため、事業の立ち上げとシステム準備を分離できます。
- 初期投資を削減して事業を開始できる
- 季節変動やキャンペーンの山に応じて増減できる
- 災害対策の予備設備を自前で保有しなくても運用できる
- 海外の利用者に近い拠点からサービスを提供できる

クラウドの請求額は利用量だけで確定しない
従量制は利用量に応じた支払いが基本で、同じ量を利用し続けるほど単価が低下する料金もあります。
請求額の見積もりは利用量の想定と契約の条件に左右されます。
契約割引と為替
1年または3年の契約による割引があります。
為替も請求額に影響します。
AWSの仮想サーバーの料金表は米ドル建てで、円換算の請求額は為替の水準によって異なります。
決算が円建ての企業は請求通貨を円に固定できる契約を選択します。
円に固定できない場合は年間の利用額が数百万円を超えると為替差が予算を圧迫するため、差額を吸収する予算を定めておきます。
データ転送料
データ転送料は請求額の増加要因として認識されにくい項目です。
クラウドへの受け取りは無料、外への送信は有料で、料金はリージョンというデータセンターの立地単位ごとに異なります。
商品画像や動画の配信、拠点間の日次転送など、外部へ送信するデータが多い業務では、この料金が増加します。
目安として月に数テラバイトを超える転送が常時発生する場合は、回線と転送の設計を先に決定します。
クラウド利用に伴う運用の作業
監視、権限の管理、設定の変更、料金の確認は利用者の担当です。
事業者が担うのは設備と基盤で、データの管理とアクセスの制御は利用者が担います。
クラウドにすると運用が不要になるわけではなく、設定と監視を担う人も必要です。
利用する会社で、クラウドの資格を保有する人材を育成するか、運用の委託先を決定しておきます。

クラウドの利用を終了するときにも費用と時間がかかる
利用を終了したときの追加コストや解約料金は設けられていません。
長期の割引契約は途中で解約できません。
利用しない期間も契約期間の支払いが発生します。
実際に費用がかかるのは移行の作業です。
データの移管、移行先での再構築、動作の検証に数週間から数か月がかかります。
データ量が多いほど、データ転送料と作業時間が増加します。
欧州連合では乗り換えの手数料とデータ転送料の徴収が2027年1月12日から禁止されます。
乗り換えの作業費と転送料の有無は、日本で調達する会社が契約書で確認します。
運用を担う人も移行の費用に影響します。
移行に伴って運用要員を削減すると、自社運用へ復帰するときに運用を担う人が社内にいなくなります。
クラウドと自前の総額を比較しても、自社運用へ移行する選択はできなくなります。
自社運用へ移行する可能性を確保するなら、構成と運用手順を社内に記録します。
特定の事業者向けに作り込むほど、乗り換えの費用は高額になります。

どこまでクラウドを利用するか
先に規制で候補を除外し、残りを期間と負荷で分類します。
データの置き場所と規制
個人データの置き場所を国外にする場合は、外国にある第三者への提供に該当するか確認します。
取扱いを委託する場合は第三者提供に該当しないことがあり、委託か提供かで要件が異なります。
外国にある第三者への提供に該当するなら、本人の同意などの要件を確認します。
国内のリージョンを選択すれば、データを国内に保持したまま利用できます。
ただし、サポートや運用を海外の拠点が担う場合は、個人データの取扱いが国外に及ぶことがあります。
- 政府のシステムはガバメントクラウドの対象サービスから選択する
- 医療や金融のシステムは所管官庁の指針を先に確認する
クラウドを利用する期間
利用期間が3年以内の場合は、クラウドを選択するほうが費用を抑制しやすいです。
取得した費用を耐用年数に配分して計上する処理が減価償却です。
サーバーなど電子計算機は5年で減価償却します。
3年以内で利用を終了する見込みなら、5年より前の売却・廃棄に該当し、投資を回収できません。
5年を超えて利用する前提の基幹業務は、自前で保有する場合と比較します。
処理量が安定し、専用の機器を長期で利用する場合は、自前のほうが安価になりやすいです。
規模と変動
ピークが平常時の数倍になる業務、季節やキャンペーンで負荷が変化する業務は、クラウドで対応できます。
利用者が数十人で変動が限定的な社内システムは、費用の面では自前とクラウドで大差ありません。
その規模では費用より、運用できる人がいるかで選択します。
オンプレミスと比較するときの見方
5年を超えて利用する場合は、比較の見方は月額ではなく5年の総額です。
小規模な社内システムなら月数万円から十数万円、基幹業務の移行なら数百万円から数千万円が目安です。
オンプレミスは機器・電気・空調・設置場所・監視・更新に費用がかかり、クラウドは利用料・設定と権限の管理・移行作業に費用がかかります。
クラウドは他の利用者と設備を共有するため単価が低下します。
自分で制御できない範囲は増加し、事業者の障害や料金改定の影響が及びます。
乗り換えの費用を抑制したいなら、基幹は自前、周辺はクラウド、間のデータ連携だけを標準化する方法があります。
この分け方は更改の予定がなく、5年を超えて稼働する基幹業務が対象です。

よくある誤解と契約前の確認
クラウドは常に安価
クラウドが常に安価になるわけではありません。
稼働時間が短く、負荷の変動が顕著なシステムは安価になります。
常時高い負荷がかかるシステムでは、総額の比較で自前のほうが有利になる場合もあります。
移行の作業費を含めると最初の数年は高くつくことがあります。
サーバーを移行するだけで費用は削減できる
サーバーをそのままクラウド上に移行するだけでは、費用を削減できないことが多いです。
自動で増減する仕組みや障害時の自動切り替えがなければ、従量制の利点は得られません。
移行の前に、改修する範囲を決定します。
契約の前に確認する5点
事業者が責任を負うのは設備と基盤です。
設定とアカウントの管理は利用者の責任です。
契約前に5点を決定します。
- データを保管する国と地域、国外へ移管する範囲
- 設定と権限の管理をどちらが担うか
- 稼働率と復旧の目標、障害時の連絡の手順
- 監査に必要な記録を提示できるか
- 乗り換えの作業費、転送料、データの返還と削除
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