人月とは
1人が1か月働く作業量の単位です。
3人で4か月かかる仕事は12人月、1人で12か月かかる仕事も同じく12人月と計算します。
時間に換算するときは1人月を160時間前後とすることが多く、IPA(情報処理推進機構)の ソフトウェア開発分析データ集2022 も1人月を160時間として集計しています。
小規模な作業は人日や人時で計算します。
システム開発では人月を2つの場面で利用します。
- 見積もりの基礎。必要な人月の数に、1人月あたりの料金である人月単価を乗算して金額を算出する。単価が100万円なら12人月の開発は1,200万円になる
- 支払いの単位。作業に対価が発生する準委任の契約では、実稼働の人月に単価を乗算した額を毎月精算する

成果物の完成に対価が発生する請負の契約でも、金額の内訳はたいてい人月で積算されています。
ただし支払いの対象は成果物に対する固定の金額で、人月が見積もりを超過しても請求額は変動しません。
単価は担当者の役割や経験別に設定されることが多く、プロジェクト管理の担当者の単価は作業の担当者より高額になります。
作業量そのものは工数と呼び、人月はその工数を計測する単位の1つにあたります。
なぜ人月を単位にするのか
ソフトウェアには開発対象の規模を誰でも同じように計測できる基準がありません。
機能の量を計測する手法もありますが、計測者によって結果が変動し、発注側が自分で確認するのは困難です。
一方で、何人が何か月稼働したかは発注側と開発会社のどちらからも集計できます。
開発対象の規模の代わりに、開発に要する人の稼働で価格を決定するのが人月という考え方です。
仕様が確定していない段階でも、この方式なら予算化と契約ができます。
人月を単位にすることの利点と限界
利点
- 計算が単純で、社内の予算申請や稟議で説明しやすい
- 開発会社ごとの見積もりを単価と人月の数に分解して比較しやすい
- 人月で精算する準委任なら契約を再締結せずに途中で仕様や優先順位を変更しやすい。月ごとに稼働を確認して精算するので、途中で中止する判断もしやすい
限界
- 人と月は交換できない。12人月の仕事を12人で1か月に短縮できない
- 生産性の差が金額に反映されない。同じ単価でも担当者や案件の条件によって1人月の進捗量に数倍の差が発生しうる
- 人月で精算する契約では時間をかけるほど開発会社の売上が増加する。受注側では作業を効率化して早期に完了する動機が希薄になりやすい
- 人月で精算する契約では成果の代わりに人数と期間が管理されやすい。何人が何時間稼働したかは報告されても、何が完成したかが不明なまま請求が継続する
- 人月で精算する契約では稼働の確認と成果に基づく方向修正の責任が発注側にある。発注側にその時間を確保できる担当者が不在なら、毎月の支払いが成果と連動しない
人と月を交換できない理由の1つは、人数が増加するほど連絡と調整の相手が増加することにあります。
組み合わせの数は3人で3通り、10人で45通りに増加し、追加した人の時間の一部は調整に消費されます。

IPAの データ集 でも生産性の差を確認できます。
新規開発46件の集計では1人月あたりに開発できた機能の量が、下から4分の1の位置で6.38、上から4分の1の位置で45.68と約7倍の差があります。
人月の数が同じでも完成する機能の量はこれだけ変動します。

人月を気にしなくてよい場面と利用すべきでない場面
数人月ほどの小規模な開発で、開発の対象と完了の条件がはっきりしているなら、人月の内訳まで精査する必要はありません。
成果物に対する固定の金額で依頼し、完成品を確認すれば十分です。
SaaS(Software as a Service)や市販のパッケージの導入は費用の大半が利用料で、人月で比較する部分は設定や移行の作業に限られます。
人月単価の比較より、利用料と業務への適合を先に確認します。
開発会社や担当者の成果を評価する場面で、人月の数を評価基準にするのは避けます。
同じ成果をより少ない人月で達成した担当者が、人月を基準にすると低く評価されてしまいます。
事業の数字がどう変化したか、何を納品したかで評価します。
成果の量を計測できない以上、生産性は正確には計測できません。
計測できないものの代わりに人月を利用すると、かえって誤判断の原因になります。
よくある誤解
同じ人月なら同じ成果物が完成する
人月は投入した稼働の量で、成果物の量ではありません。
同じ10人月でも、担当者と進め方次第で成果は数倍変動します。
人月単価が低いほど開発費も低くなる
低単価の利点は人月の数の多さや手戻りで相殺されることが多くあります。
海外の開発会社に委託するオフショア開発でも、仕様の伝達や品質の確認にかかる発注側の手間は人月単価に含まれません。
比較するのは単価ではなく、完了までの総額と発注側の作業時間の合計です。
人月の見積もり金額で完成が約束される
答えは契約形態に依存します。
準委任の契約で見積もった人月は作業量の見込みで、完成を約束するものではありません。
見込みを超過すれば超過分の人月が追加で請求されます。
請負での人月は金額の算出基礎にすぎず、約束の対象は成果物の完成と契約金額です。
人月が見積もりを超過しても、契約の範囲内なら追加の請求は発生しません。
Construx社の 不確実性のコーン の解説は、構想段階の見積もりが実際の費用の4分の1から4倍までずれうると整理しています。
その段階の人月の数は幅で把握します。
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