基幹システムとは
企業の取引と経営資源の動きを、金額と数量で確定させて記録するシステムです。
受注から出荷・請求までを処理する販売管理、購買管理、在庫管理、生産管理、会計、人事給与が代表的です。
どの業務までを基幹と呼ぶかは会社ごとに異なりますが、多くの会社では会計、販売管理、生産管理を指します。
メール、グループウェア、社内ポータルのように情報の共有や伝達を目的とするシステムは情報系と呼び、基幹系と区別します。
基幹業務を1つの製品に集約したものがERP(Enterprise Resource Planning)で、基幹システムを実現する手段の1つにあたります。
販売管理と会計を別々の製品で運用していても、それぞれが基幹システムです。
英語ではSoR(System of Record)と呼びます。
SoRはデータの項目ごとに、正とするデータを保有するシステムを指す意味でも使用されます。
顧客の連絡先の正とするデータがCRM(Customer Relationship Management)にあれば、その項目ではCRMがSoRです。
開発会社との会話でSoRという語が使われたら、システム全体の分類の話か、項目ごとの正とするデータの話かを確認するとよいです。
基幹と周辺の分担
基幹システムの周辺には顧客や従業員とのやり取りを担うシステムと、データを分析するシステムが配置されます。
前者はSoE(System of Engagement)と呼ばれ、CRM、EC(Electronic Commerce)サイト、マーケティングの自動化ツール、社員向けのアプリがこれにあたります。
後者はSystems of Insightと呼ばれることもあります。
ECサイトで受けた注文に対して基幹システムが在庫を確保し、出荷と請求を確定させ、分析のシステムが売上を集計する、という流れです。

| システム | 主な役割 | 変更の頻度の目安 | 停止したときの影響 |
|---|---|---|---|
| 基幹システム | 取引と金額・数量の確定と記録 | 法改正や組織変更に応じて年に数回 | 出荷・請求・給与が停止する |
| 顧客・従業員とのやり取りのシステム | 受付、接客、営業活動、顧客向けの画面 | 施策に応じて週から月に1回 | 受付や営業の効率が低下する。短時間なら手作業で代替できる |
| 分析のシステム | 複数のシステムのデータを集約した集計と可視化 | 分析の切り口に応じて随時 | 意思決定の材料が遅れる |
会計や給与の処理は法令や会計基準に準拠するため、多くの会社で共通しています。
頻繁に変更する必要もありません。
顧客向けの機能は売り方に応じて頻繁に変更したいものです。
両方を1つのシステムに作り込むと、画面を1つ変更するにも会計や在庫への影響を確認する試験が必要になり、施策が基幹の改修待ちになります。
経済産業省のレガシーシステムモダン化委員会総括レポートも、標準的な仕様に合わせる部分と付加価値を作り込む部分を区分するよう求めています。
ECが売上の大半を占める会社では、ECサイトの停止で売上も停止します。
停止したときの影響だけで基幹かどうかを決定せず、取引を確定させて記録する役割かどうかで区分します。
経営会議の資料のように複数のシステムのデータを組み合わせる集計は、基幹から直接出さず、分析用の基盤にデータを取り込んで行います。
日中に基幹システムで重い集計を処理すると、受注や出荷の処理が遅延する場合があります。
正とするデータの置き場所
顧客や商品の情報は基幹システムと周辺のシステムの両方に保存されやすいです。
一元管理のために機能を基幹へ集約する必要はありません。
集約するほど改修の試験範囲が拡大し、変更はかえって遅くなります。
必要なのは項目ごとに正とするデータの置き場所を1か所に決定しておくことです。
決定せずに両方で入力できるようにすると、不一致の確認が日々の手作業になります。

止めないための代償
基幹システムは変更が遅いです。
改修のたびに会計や在庫への影響を確認する試験が必要になります。
上場企業では基幹システムが財務報告に関係します。
財務報告の適正性を社内の仕組みで確保し評価する内部統制報告制度の実施基準は、IT全般統制の1つにシステムの開発と保守の管理を挙げています。
そのため変更の承認と試験の記録を保存する手順が追加されます。

刷新の負担も周期的に来ます。
製品の保守期限やハードウェアの更新に応じて、目安として数年から10年程度ごとに刷新や大きな版の更新が必要になり、大規模なら移行に数年単位かかります。
その間は業務部門も試験と移行に人員を割きます。
保守は特定の開発会社や製品に依存しやすく、保守費の値上げや担当者の退職を自社では阻止できません。
切り替えに失敗したときの損失は多額です。
江崎グリコは2024年4月の基幹システムの切り替え後に障害が発生し、チルド食品の受発注と出荷が停止しました。
5月に通期の売上高予想を150億円引き下げ、11月にさらに60億円引き下げました。
機能を周辺に分割すれば基幹の変更は減少しますが、連携の開発と、相手側の変更に応じた連携の保守が続きます。
連携の停止を検知する監視と、修正できる担当者が必要になります。
よくある誤解
基幹システムは旧来の大型のシステムのこと
基幹かどうかは役割で区分され、稼働年数や規模とは関係ありません。
会計SaaSも基幹システムです。
基幹システムのうち、変更が困難になって事業の足かせになったものをレガシーシステムと呼びます。
稼働年数が長いだけではレガシーにあたりません。
周辺のシステムだけ刷新すれば事業の変化に対応できる
顧客向けの画面を刷新しても、在庫や与信の情報を基幹システムから取得できなければ、受注後の処理は人手のままです。
周辺を開発するときは基幹システムのどのデータを、どの頻度で受け渡すかを先に決定します。



