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プロダクトマネジメント・組織

内製化とは

ないせいか / 内製

システムの企画・開発・運用を、外部へ任せきりにせず自社の組織で担うことです。全部を自社で開発することではなく、競争力と関係する領域に限定し、決定する人と改修できる人を社内へ配置するのが現実的です。

公開
2026.10.29
更新
2026.10.29
内製化

内製化とは

内製化は何を開発するかの決定、画面の改修、障害対応や問合せ対応といった作業のうち、どこまでを外部の事業者へ任せきりにせず自社の人が担当するかを指します。

たとえば受注管理画面に入力項目を1つ追加する変更が、依頼書の作成と作業開始待ちで数週間かかっていたとします。業務を理解している社内の担当者が直接改修して翌週に反映できる状態が、内製化の近い姿です。承認やテストの待ちが原因なら、内製化しても解消されません。

受注管理画面の変更を想定した時間の模式図。外部へ依頼する場合は依頼書作成と作業開始待ちのあとに改修し、さらに承認・テスト待ちが発生する。社内の担当者が直接作業を開始できる場合は、依頼書作成と作業開始待ちを省略できる。承認・テストの手順や体制が現状のままなら、その待ち時間は解消されない。棒の長さは実際の時間の比ではない。

インターネット経由で利用するSaaS(Software as a Service)や、共通機能を集約したパッケージ製品は、利用するだけなら内製化ではなく、開発を外部へ依頼する外部委託とも異なります。自社に固有で手順が頻繁に変化する業務で、試行と改善を反復する回数を増加させ、業務の知識を蓄積することが目的です。たとえば、受注管理で自社固有の手順が頻繁に変化する場合が該当します。

なぜ内製化が求められるか

業務が変化するたびにシステムの変更が必要になる領域では、変更内容の文書化や反映の待ち時間が、試行と改善の回数の制約になることがあります。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のDX白書2023では、競争領域のシステムはアジャイル開発の体制を社内に構築し、小規模な開発を反復すべきだとされています。アジャイル開発は小規模に開発して確認しながら進行する方法です。

DX動向2025では内製化で事業のコア領域の知識を蓄積し、経営の機敏さを向上させる重要性が増大しているとされています。

DX動向2025の2024年度分では、日本で内製化を進めている企業が22.3%、必要な部分は内製化済みの企業が16.7%です。外部の開発を今後も利用し、内製化は進めていない企業が29.3%を占めます。

DX動向2025の2024年度、日本の企業1,500社への調査のうち3項目を抽出した横棒グラフ。内製化を進めている22.3%、必要な部分は内製化済み16.7%、外部開発を今後も利用予定で内製化は進めていない29.3%。この3項目では、29.3%の項目が最も多い。

効果とコスト・リスク

効果

  • 変更を迅速に反映したい業務は、業務担当者が優先順位を決定し、開発と確認の時間を確保できるなら内製の候補にする
  • 手順と変更の履歴を記録すれば、業務の知識を蓄積する手段になる

コストとリスク

内製化を進めている日本の334社が課題として選択した割合は、人材の確保や育成が82.3%、新技術への対応が48.8%でした。体制は人材の補充に時間がかかる前提で構築します。

内製化を進めている日本の334社が選択した課題の割合を示すグラフ。人材の確保・育成は82.3%、新技術への対応は48.8%。

  • 開発と運用の人件費が社内に継続して発生し、ツールの利用料や専門家への相談費も継続して発生しうる
  • 外部の開発を移管する間は両方の体制が並行する
  • 担当が1人だと退職や休暇のときに復旧できる人がいなくなる
  • 運用・保守を含めると、監視と問合せ対応も社内の仕事になる
  • レビューやテストを実施せずに改修を反復すると、将来の改修や保守の作業量が増加する技術的負債として蓄積する

内製化はどこまで推進すべきか

競争力に直結し、変更が頻繁な領域に限定します。会計や勤怠のように他社と共通する業務は、SaaSやパッケージが適合しやすい領域です。協調領域は業務を標準化してSaaSやパッケージを活用し、競争領域は社内に開発体制を構築するともされています。

納期、品質、価格のような顧客への提供価値がその業務の進め方で決定されるなら、競争力の源泉とみなすのが目安です。既製品の標準に適合させても変化しないなら対象外です。

判断の流れ。業務の進め方が提供価値を左右し変更が頻繁なら継続可能な範囲で社内開発体制を構築し、そうでなければ内製せずSaaSや既製品を利用する。

次の条件に該当する業務は内製化を優先します。

  • 業務の進め方が提供価値を左右し、他社と同じ仕組みにできない
  • 週や月の単位で業務の変更が発生する
  • 完成形を事前に確定できず、使用しながら決定する

次の条件を満たす範囲が内製を継続できる範囲です。

  • 業務担当者が開発と確認の時間を確保できる
  • 権限と手順を備えた代替担当を配置できる
  • 停止できない業務で復旧体制を社内外に確保できる

不足する場合は継続できる範囲に内製を限定し、残りは外部委託やSaaSを利用します。

次のいずれかに該当する業務は、内製化を優先しません。

  • 他社と共通する業務
  • 変更がほとんどなく、安定した稼働が目的の業務
  • 専門性が高く、必要な期間が短い業務

夜間や休日も復旧が必要なのに体制を確保できないなら、運用まで社内で担う範囲を縮小し、残りは外部委託を利用します。

内製と外部の二択ではありません。商船三井は外部に委託するほうが合理的な部分は委託し、内製すべきシステムは社内で対応しているとされています。

何を開発するか、どの順で改修するかを決定する役割は、外部を利用する場合も最初に社内へ配置します。改修、運用、新規の設計と開発のどこから自社へ移管するかの基準は、既存システムを理解している人がいるかと、復旧の手順を理解し必要な権限を保有する人がいるかです。理解に時間がかかるなら小さな改善から開始します。

開発者を採用できない会社は内製化をどこから開始するか

開発者の採用より先に、業務を理解している人が小さな改善を担うところから開始します。

電力制御装置を製造する日東電機製作所では、2022年時点の推進組織は6人ほどで、基幹システムの開発も担当する情報技術の専門家が参加しているとされています。推進組織は社員の相談先として、現場を巡回して困りごとを聴取します。開発を担当するのは品質保証や調達などの部門の社員で、プログラミングの専門知識がなく、Power Automateなどのツールで製造の不具合を集計するアプリを作成しています。必要なのは業務の理解と改善の意欲だとされています。同じ形で開始するには相談できる専門家が前提で、社内にいなければ外部の専門家を先に確保します。

推進組織と現場の社員の役割分担。推進組織が現場を巡回して困りごとを聴取し、現場の社員がツールで不具合集計アプリを作成する。前提: 推進組織に相談できる専門家がいる。

アプリやサービスを連携させる自動化は、Power Automateのようなツールで業務担当者でも構築できます。専門の開発者の確認が必要になる場合があるのは、独自の連携処理、複雑な権限設計、高い性能や無停止の稼働が必要なときです。実際の利用開始前に、対象の情報、閲覧と更新ができる人、変更時の確認方法、誤更新からの復旧方法を決定します。Power Appsは共有するアプリだけでなく元のデータの権限も管理する必要があります。

担当者が退職しても業務が停止しないために必要な事前の取り決め

担当者以外も復旧できるよう、手順と権限を共有します。

  • 利用するサービスと接続関係を示す構成図、手順書、変更の履歴を、改修のたびに更新する
  • 主担当以外に、保存場所、権限、復旧手順を把握し、手順どおりに復旧できることを検証した代替担当を配置する。人数は主担当を含めて最低2名を目安とし、対応時間と負荷に応じて増員する
  • 前述のPower Automateのフローは作成者が所有者になるため、退職前に所有権を別のユーザーへ移管する手順を確認する
  • 主担当と代替担当がともに不在のときの連絡先と外部の支援を決定する。夜間休日の担当は業務の停止を許容できる時間に応じて要否を決定する

担当者が不在のときの引き継ぎ。主担当が不在のときは代替担当が復旧し、両者が不在のときは、決定した連絡先へ連絡して外部の支援を利用する。構成図、手順書、変更の履歴は、主担当と代替担当で共有する。

よくある誤解

内製化は全部を自社で開発することだ

米国の競争領域でもDX白書2023では内製による自社開発とした回答は53.1%で、外部委託は20.5%、既製品やSaaSの導入は29.5%でした。内製以外の手段も選択されています。最大2つまで選択できる設問のため合計は100%を超えます。

米国の競争領域で選択された手段の棒グラフ。設問は最大2つまで選択できる。内製による自社開発が53.1%、外部委託が20.5%、既製品・SaaSの導入が29.5%。

内製化すれば外部委託より安価になる

総額が外部委託より安価になるとは限りません。人件費、ツールの利用料、採用と育成、並行運用を数年単位で合算して比較します。外部委託と比較してコスト意識が低くなることも、内製化の課題の項目に含まれています。

ローコードツールがあれば誰でも内製化できる

少ないプログラミングでアプリや自動化を作成するローコードツールは内製化の開始を支援しますが、変更管理、テスト、保守は必要です。担当者の確保も優先順位の決定方法の確立も、ツールを導入しただけでは実現しません。

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