# マルチエージェントとは

複数のAIエージェントに作業を分担させ、結果を統合して1つの目的を達成する構成です。独立した調査を並行できる作業では成果と速度が向上することがある一方、費用が増加し分担の誤りも発生するため、1つのエージェントで不足する作業に限って採用します。

## マルチエージェントとは

マルチエージェントは、1つの目的のために複数のAIエージェントを稼働させ、作業を分担させてから結果を統合する構成です。
各エージェントはそれぞれ別の指示、使用できるツール、会話の履歴を保持し、担当範囲の作業を処理します。
代表的なのは、全体を統括するエージェントが依頼を作業に分割して担当のエージェントに配分し、返却された結果を統合する構成です。

たとえば競合10社の価格と提供条件を比較する調査では、統括のエージェントが会社ごとに担当のエージェントを起動し、各担当が並行して公開の資料を調査し、要点だけを統括のエージェントに返却します。
ClaudeのResearchの機能はこの構成で、統括のエージェントと複数の担当のエージェントが[並行して検索する](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)形です。
人の組織でいえば、責任者が調査の範囲を分割して担当者に配分し、報告をもとに最終的な結論を作成する進め方に相当します。

![統括のエージェントが依頼を分割してA社、B社、C社の調査担当に配分し、各担当が並行して調査した要点を統括が統合して回答することを示す図](https://media.marketing.kdotdev-tunnel.org/glossary-multi-agent-209717648b7dc5c6c2b825b730ab552903f1b87213ffdb03d0504ba6a021aeba.png)

目的は、独立した調査を並行させて処理時間を短縮し、1つのエージェントでは処理しきれない量の資料を処理することです。
1つのエージェントとの違いは、作業と会話の履歴を担当ごとに分割するかどうかです。
1つのエージェントは、すべての手順の結果を1つの会話の履歴に蓄積しながら順に作業します。
統括と担当に分割する構成では、担当のエージェントは他の担当が何を決定したかを、統括のエージェントから伝達された範囲でしか把握できません。
統括のエージェントが担当を起動する形も、別の製品や組織のエージェントに[A2A（Agent2Agent）](https://a2a-protocol.org/latest/)の規格で作業を依頼する形も、マルチエージェントの構成に含まれます。

## 1つのエージェントの限界

1つのエージェントが一度に処理できる情報の量は、コンテキストウィンドウの上限に制約されます。
多数の資料を調査する作業では、途中の検索結果が蓄積して上限に接近し、以前の情報が要約や削除で欠落します。
手順を順に実行する構成では、独立した調査が10件あれば、10件の調査に要する時間を合計した時間が処理時間になります。

担当ごとに会話の履歴を分割すれば、各担当は自身の調査に必要な情報だけで作業でき、統括のエージェントには要点だけが返却されます。
独立した調査を並行させれば処理時間も短縮できます。
Anthropicの社内の調査の評価では、統括にClaude Opus 4、担当にClaude Sonnet 4を使用した構成が、Claude Opus 4だけの構成より[90.2%高い成績](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)で、特に複数の方向を同時に調査する幅広い質問で効果が高いとしています。
同じ報告は、別の評価で成績の差の8割を[トークンの使用量で説明できた](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)としており、成績が向上した構成では費用も増加しています。
反対に、2025年6月の時点でCognitionは、分担したエージェントどうしが異なる前提で作業する問題を指摘し、[マルチエージェントを構築しない](https://cognition.ai/blog/dont-build-multi-agents)ことを推奨しています。

![1つのエージェントはA社、B社、C社の調査を順に処理してから回答し、統括と担当に分割すると3社の担当が同時に調査し、統括が統合して回答することを示す図](https://media.marketing.kdotdev-tunnel.org/glossary-multi-agent-b6c12bf0c17dcd6383e8fa273ea1398bf63cab88dd94183cf74e560ecf0df6d5.png)

## マルチエージェントの効果とコスト・リスク

### 効果

- 並行による高速化。独立した作業を同時に処理できる。Anthropicは、担当の並行での起動と並行の検索で、複雑な調査の時間を[最大90%短縮した](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)と報告している
- 情報量の拡大。1つのコンテキストウィンドウに収容できない量の資料を、担当ごとに分割して処理できる
- 担当ごとの制限。担当ごとに使用できるツールと権限を限定できる

### コストとリスク

- 費用の増加。Anthropicのデータでは、エージェントは通常の対話の約4倍、マルチエージェントは[約15倍のトークン](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)を使用した。両者の比から、1つのエージェントと比較すると約4倍と推計できるため、成果の価値がこの費用を上回る作業でなければ採算が成立しない
- 分担の誤り。担当ごとの範囲の区切りが指示に記述されていないと、担当どうしが同じ調査を重複させ、必要な範囲を誰も調査しないといった失敗が発生する。Anthropicの初期の版では、簡単な質問に対して[50の担当を起動する](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)失敗もあった
- 前提の不一致。担当どうしが互いの決定を把握できないため、並行で作成した成果物の方針が一致せず、統合できないことがある。Cognitionは、ゲームの背景と登場する鳥を別の担当に作成させると、画風の異なる2つを統合する作業が後に[発生する例](https://cognition.ai/blog/dont-build-multi-agents)を示している
- 失敗の多さ。2025年に公開されていた7つのマルチエージェントの仕組みでは、課題を達成できなかった割合が[41%から86.7%](https://arxiv.org/html/2503.13657)で、原因は設計の問題、エージェントどうしの連携の不一致、結果の検証の不足に分類された
- 待ち時間。統括が担当の結果の到着後に次の手順を開始する構成では、最も遅い担当の完了まで[全体が停止する](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)
- 外部の文章による誘導。担当がWebページなど外部の文章を参照する構成では、文中の命令文で担当の動作を変更する[プロンプトインジェクション](https://genai.owasp.org/llmrisk/llm01-prompt-injection/)を受けうる担当が増加する。統括が要約を検証しなければ、誘導された担当の要約がそのまま回答に反映される
- 調査と評価の手間。結果が実行ごとに変動し、失敗したときはどの担当のどの段階で誤りが生じたかを複数のログから追跡する必要がある

![Anthropicのデータで、通常の対話のトークン使用量を1とすると、エージェントは約4倍、マルチエージェントは約15倍になることを示す横棒グラフ](https://media.marketing.kdotdev-tunnel.org/glossary-multi-agent-881e4ee4efc48d70fb473ce5f49bdc9dfce2b842eb022a5863dcd34fc877191b.png)

## 1つのエージェントで十分な作業と分割する作業

まず1つのエージェントで構築し、処理できる情報の量や処理時間が実際に問題になった作業だけを分割します。
マルチエージェントが有効なのは、作業が独立した部分に分割でき、部分どうしが互いの途中の判断に依存しない場合です。
部分どうしが密接に依存する作業は、分割すると担当ごとに異なる前提で作業しやすいため、1つのエージェントで処理します。

| 作業の性質 | 構成 |
|---|---|
| 1社の資料の要約や1件の問合せへの回答など、調査の対象が少ない | 1つのエージェント |
| 1つの文書や1つのプログラムを一貫した方針で作成する | 1つのエージェント |
| 競合各社の比較のように、独立した調査が数件以上あり、要点だけを統合すればよい | 統括と担当に分割する |
| 数十件の資料を比較するなど、1つのエージェントでは途中の結果が蓄積して欠落する | 担当に調査させ、要点だけを返却させる |
| 担当ごとに使用させるツールと権限を分離したい | 担当を分割して権限を限定する |

Anthropicは、マルチエージェントが特に適する作業として、[並行して処理できる部分が多い作業、1つのコンテキストウィンドウを超える情報を処理する作業、多数の複雑なツールを使用する作業](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)の3つとしています。
同じ報告は、多くのプログラミングの作業は[調査より並行できる部分が少ない](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)としています。
1つの資料を一貫した論旨で作成する作業も、担当に章を分担させるより、1つのエージェントが調査の結果を受領して全体を作成するほうが安全です。

![情報量や処理時間が実際に問題でない、部分が互いの判断に依存する、成果の価値が費用の増加を上回らない、のどれかに該当すれば分割せず1つのエージェントで処理し、それ以外のときだけ統括と担当に分割する判断の図](https://media.marketing.kdotdev-tunnel.org/glossary-multi-agent-95188a3b7af6849639c8da7f68ba47f95fbf768d255daa087828ba5f923f0a35.png)

### 分割する構成を評価するときに確認すること

製品や社内で構築する構成を評価するときは、同じ実際の作業を目安として数十件用意し、1つのエージェントの構成と分割した構成の両方で実行します。
完了した割合、人が修正した量、1件あたりの費用と処理時間を記録し、成果の向上が費用の増加を上回る場合だけ、分割した構成を採用します。
費用は、1つのエージェントで実行した1件あたりの費用を先に測定し、分割した構成では、Anthropicのデータの[約4倍と約15倍](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system)の比から、その約4倍を目安に想定します。

| 確認すること | 満たしたい状態 |
|---|---|
| 担当への指示 | 担当ごとに目的、出力の形式、使用するツールと資料、担当の範囲が記述されている。Anthropicも担当にこれらが[必要だとしている](https://www.anthropic.com/engineering/multi-agent-research-system) |
| 担当の数と予算 | 依頼の複雑さに応じた担当の数と、1件あたりのトークンの予算に上限がある |
| 統合の検証 | 担当の結果をそのまま統合せず、統括のエージェントか人が矛盾と欠落を確認する |
| 外部の文章 | 外部の文章を参照する担当には、送信や書き込みの権限を付与しない |
| ログ | 担当ごとの指示と結果が保存され、失敗したときにどこで誤りが生じたかを追跡できる |

## よくある誤解

### 役割ごとにエージェントを追加すれば人の組織のように分業できる

担当の数を増加させると費用が増加し、担当どうしの調整が必要な作業では連携の失敗も増加します。
エージェントどうしを会話で調整させる構成もありますが、分析された7つの仕組みでは[エージェントどうしの連携の不一致](https://arxiv.org/html/2503.13657)が失敗の主な原因の1つでした。役割を細分化すると担当の間で受け渡す決定が増加し、統括が伝達しない決定に依存する作業も増加します。
成果が向上しやすいのは、独立して並行できる部分がある作業です。
分割の単位は役割ではなく、他の部分の判断に依存しない作業にします。
